ゆうきちゃん・夢の花束
話しことばにかかわりをもって55年余り、
むなかた りょう の童話第二巻。
体や心で感じることはステキな幸せ。
“第一巻の発行からみて五年の年月が流れました。
その間、何人かの方から、「大きくなったゆうきちゃんを書いては」との声がありペンを取りました。今度は五感をいかしたゆうきちゃん。目、鼻、耳、手、そしてゆうきちゃんの大好きな天使と夢の物語を書いてみました”
ヨシのお地蔵さま
梅雨なのによく晴れた休日、自転車で遊びに出かけた小学生の少女ヨシは、通りがかりの男の人を公園まで道案内してあげた。その公園の裏には「しばられ地蔵」があるが、荒縄でぐるぐる巻かれているので、ヨシはその姿を見たことがなかった。ところがその晩、ヨシの夢にしばられ地蔵の姿が現れ、「いつも同情してくれてありがとう。しっかり勉強して多くの人の役に立つ人間になるのだよ」と優しく声をかけてくれた。ヨシは学業に励み、新聞配達をしながら高校を卒業し、看護学校にまで進む。誰からも尊敬される婦長になったヨシを、今もお地蔵さまが見守っている。
アトリと赤い実
なにげない冬の思い出が素敵な絵本を生み出した。主人公の少女は、冬休みになると兄と一緒に祖父母の家に遊びにいく。そして幼い兄妹の二人旅は毎年続けられ、厳冬のナナカマドに集まる「アトリ」たちの写真を撮った。全頁とも文と絵がともに描かれている本格的な絵本作品で、とりわけ雪とナナカマドのコントラストは素晴らしい。厳寒の冷気やまぶしい朝の光、樹木からカサッとこぼれる雪の音までもが聞こえてきそうな傑作。
みなしごニポポとブナの木のいのり
深い森の物語。ある吹雪の日、やんちゃ坊主の小熊「ニポポ」は、雪崩で母熊を亡くしてしまう。それからは「ブナ爺」や「ホージロウおじさん」に遊んでもらいながら成長するが、やがて彼等のもとを離れていった。 そしてまたある日「ニポポ」は、弱い者を守るりっぱな雄熊になって戻ってきた。何百年も穏やかに未来を示しつづけた老齢のブナの木の思いや正義と愛の継承が描かれている。絵本らしい可愛い表紙が印象的。